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見逃されている全仏オープンの加藤未唯選手の失格騒動で一番残念なこと

2023.06.16 カテゴリ: グローバルビジネスダイバーシティ経営企業経営での留意点社会問題

1.相手方は汚いか

 テニスの全仏オープン女子ダブルスの加藤未唯選手の失格問題は非常に腹立たしく思った方は多いのではないでしょうか。これは試合中に加藤選手がボールを返そうとしたところそのボールがボールガールの頭を直撃、本人は泣き出してしまったことで始まりました。これに対し、最初審判は警告を与えましたが、相手選手の執拗な抗議の結果、失格とポイントの没収を行いました。これに対し、執拗な抗議をした選手や判定を曲げた審判に世界中から不当だと批判が起こりました。特に相手選手に対する批判はSNSを閉鎖せざるを得ないほど凄まじいものだったようです。

 ただ、相手選手それほど非難されることでしょうか。ボールをボールガールぶつけてしまった加藤選手のミスに対し、それに付け込んで抗議していく、多分国際的な感覚だと当たり前ではないかとも思うのです。ただ、その場面を見てもないのに血が出ている、ボールの勢いは強かったなど虚偽の申告をしたうえ執拗だったと、やり方があまりにも汚いので批判を浴びただけといえます。

 

2.そもそも世界は公正でも何でもない

 特に、スポーツの世界で日韓サッカーワールドカップでの韓国の審判買収疑惑や中東の笛問題などいわゆるアジア・アフリカ・中南米などでは不正がまかり通るというイメージあります。一方欧米については比較的公正に物事が運ばれていると思いがちです。本当にそうでしょうか

 例えばスキージャンプの板の長さ、これがルール変更で身長プラス80cmから身長の146%に替えられました。ジャンプの板は長いほど飛距離長くなるので明らかに身長の高い欧米の選手に有利なルール変更です。ただ、当然「選手の安全性の配慮」などロジックを巧妙に組み立てて自分たちに有利な方法にルールを変えていくというのがやり口です。これに対し日本のスキー団体は対して抗議もせず、ほぼそのまま従ってしまいました。

 要するに欧米はよく言えばきわめて洗練された方法でルールを曲げていく一方、その他の国はあまりにもストレートでわかりやすい方法でやるので汚いイメージがついてしまうのに過ぎないといえます。

 さて、私は日本の会社よりも欧米の会社で働いた期間の方が長いです。欧米の会社の方が日本の会社より一般的に風通しはよく、社内の競争もフェアであると思っている人は多いです。しかし、別に人間どうしなので会社内のパワーゲームは普通にありフェアでないことも多々あります。ただ、そのようなものは存在することを前提として、お互い率直に意見を言い合う風土を作ろうとルール作りをしているといえます。

 まとめると、当たり前ですが人間の本質はどこの国でも大して変わらないです。ただ、欧米諸国は汚い手を使うにしても洗練されています。また一皮むくとバリバリの弱肉強食の厳しい社会なので人間の悪い面、弱い面をしっかり見て現実的なルール作りを巧みに自分に有利に作っていく傾向があるといえます。

 したがって、国際的な組織の中において、自国の利益を守るためにしっかりと言うべきは言わないと単なる負け犬で貧乏くじを引かされます。今回の加藤選手の件は典型的といえます。

 

3.日本は偉い人が体を張らない

 さて、公益財団法人日本テニス協会、「国内外の人々や組織と協力し、テニスの発展に尽力します」がビジョンとして挙げられています。行動指針としても「世界的視野を持って行動し、海外の関係者と積極的に交流します」とあります。しかし、今回の失格問題に対して積極的に何か行動した様子はなく、ただ単にルールに従うと声明を出しただけの残念な結果です。一方、PTPA(プロ選手協会:ジョコビッチが創設した選手の声を反映させる目的で設立)などは明らかに今回の処置は不当として声を上げています。

 「国際ルールに従う」などとよく聞きますが、そもそもルールなどは表面的にはそれらしいロジックはありますが残念ながらパワーゲームで決まることも多く、その運用も実は恣意的だったりします。今回も少なくない人々がルールの運用を恣意的だとみているようです。

 確かに、ルール作りにしても運用にしても欧米人などに議論をふっかけてやりあうのは面倒だし疲れます。でも、やはり日本の組織のトップやそれに近い人は本来泥をかぶってもそういったことをやるのがお仕事なはずです。こういったとき日本の組織の偉い人、泥をかぶって汗を流してくださる人本当に少数、そしてそのとばっちりは例えば今回の加藤選手のような世界の現場で頑張っている日本人が負うわけです。こういった日本の組織のトップで国際的組織とかかわる偉い人の劣化はすごく残念です。

 ちなみに日本テニス協会の会長は山西健一郎氏、三菱電機の元会長です。三菱電機といえば、製品不正の不祥事で大問題を起こした会社です。この問題は一部署の問題ではなく長く築かれた組織風土の問題とまで断罪されました。こういう方が組織のトップというのはなかなかブラックジョークだと思いました。

 

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