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ディズニーランドの株(オリエンタルランド)を京成電鉄が売れない理由とは

2023.11.10 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

目次

1.パリサーキャピタルの主張

「京成電鉄が東京ディズニーランドの設立にかかわった経緯で60年以上前から保有するオリエンタルランド株について、英投資ファンドから一部売却を求められている。保有分の時価は1.6兆円と、自社の時価総額を大きく上回る。」(日本経済新聞11月1日)という記事が掲載されました。

 英ファンド(パリサーキャピタル)の主張はもしオリエンタルランド株を現在の22%から持分法から外れる15%未満まで売却するとその売却益と株式の時価評価に伴う含み益の実現化で純資産は大幅増加してPBR(株価純資産倍率)は現在の1.7から0.5に大幅に低下すると主張しています。

 PBRが低い(1未満)は本来の自社の資産を有効活用していないということを表しています。パリサーキャピタルの主張はオリエンタルランド株が持分法適用によって時価評価がされていないため、その非効率性が表に出ていないということがあります。

2.京成電鉄の決算内容

直近期の決算(2023年3月)を見てみると売上高2523億に対し営業利益が102億、それに対し持分法による利益が174億でその結果経常利益は267億です。ざっくり言うと京成電鉄はオリエンタルランドの22,2%を持分法子会社株式として保有していますので同社の当期利益の22.2%を持分法利益として取り込めます

 言い方は悪いですが要するに京成電鉄は何もしなくてもオリエンタルランドの業績が良ければどんどん経常利益は稼げるわけです。なにせオリエンタルランドの持分法利益は京成電鉄の稼ぐ利益(営業利益)より大きいのです。

 一方オリエンタルランドの資産価格はどのように京成電鉄の貸借対照表に載っているのでしょうか?おそらく京成電鉄の単体財務諸表の関係会社株式に載っている約885億がその価額と推測されます。一方でこのオリエンタルランド株の時価は1,818,450,800株で3月31日現在の株価が4528円、そのうち22.2%を所有しているので1兆8000億円程度となります。

 どうしてこのようなことになるかというと持分法会計にあります。持分法会計を用いると、株式の価額は購入価額+オリエンタルランドの当期純利益(累積)x持ち分比率-配当額(累積)なります。購入価額はおそらくオリエンタルランド設立初期の未上場の時代の価額ですからもう株価は爆上がりしているわけです

3.京成電鉄はどうすべきか

 京成電鉄の有価証券報告書を見てもオリエンタルランドは持分法子会社である旨と両社で兼務している役員の記載以外一切登場しません。その中での記載も「取引関係は、テーマパークチケットの購入等といった一般消費者と同様の取引等に限られ当該取引額は当社および同社双方の売上高の1%未満と僅少です」とそもそも関係がほとんどないことを明記しています。要するに純粋にビジネスだけ考えたら保有する意味はありません。

 ただ、パリサーキャピタルの言うように持分法からオリエンタルランドが外れるくらいまで株式売却し、オリエンタルランド株を時価評価し、資本効率を意識した経営をすべきなのでしょうか?例えば最近の株価でみると約5,000円なので持分15%をわりこむ約7.2%を売却すると手元には以下のお金が入ります

5000×1,818,450,800×7.2%≒6500億円

 この6500億円を京成電鉄の発展に帰するための投資に使いオリエンタルランドが時価評価された純資産に見合う資本効率の高い会社に生まれ変わりなさいという主張です。財務・会計の専門家の見地からはパリサーの主張は極めて妥当だと思います。一方、そうはいってもという部分はあります。

 オリエンタルランドの株式の簿価は885億、そして毎年(コロナ禍の時代除けば)100億以上の利益を京成電鉄にもたらしています。執行する取締役は内部登用のサラリーマンたちです。どう考えてもこの安定的収益源自分が役員やっている間に手放して失敗して戦犯として会社の歴史に名を残すのは避けたいのではないでしょうか?

 かつ一般的な順送りの人事で上がってきた社長や役員たちに「6500億円で事業の発展のために使って儲けてこい」と物言う株主に言われてどんな気分なのでしょうか?自分に例えてみるとやくざの組長に1億円渡されて「ラスベガスかマカオで儲けてこい」と言われているような気分かもしれません。

 こういったことができない日本のサラリーマン経営者たちに悲しい思いを持ちつつも、仕方がないと同情する面もあるといったところです。

 

 

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