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PBR1倍割れはなぜ起こる?

2024.10.17 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

目次

1.低迷するPBR

 10月4日のブルームバーグ、「東証株価指数(TOPIX)500構成銘柄でPBRが1倍を割っている銘柄は、9月末時点で38.0%だった。3月末の32.2%を底に上昇に転じ、昨年6月を上回る水準まで戻した。」と発表しました。

 PBRとは株価÷一株当り純資産を表します。ここで、1倍割れとは株価が企業の解散した際の価値(もし、解散して負債を返却して資産を売却したら残るのは純資産だから)を下回るということ、つまりそれだけ株主から見て将来性を感じておらず魅力がない会社ということを表しています。

 この数値がここ数年、非常に注目を集めているには理由があります。いわゆる、PBRショックです。投資家の低評価について東京証券取引所が低PBR企業に改善計画を開示させることを明らかにしました。こういったPBRショックにより、昨年は1倍割れのいわゆる低PBR企業は減少していたのですが、また元に戻ってしまったといえます。

 自社株買いなどの処置で純資産を減らして分母を下げたとしても、株価の上昇が一時的で特にそれ以降上昇せず、適当に利益が出て内部留保があれば純資産の数字が大きくなりPBRは元に戻るのは自明かと思われます。

 

2.なぜPBRがあがらないか?

ROE x PER= (当期純利益÷自己資本)x(株価÷一株当たり純利益)すがROEの方を発行株式総数で分子分母をわると

ROE x PER=(一株当たり当期利益÷一株当たり純資産)x(株価÷一株当たり純利益) ≒PBR

(一株当り自己資本≒一株当り純資産)

 自己資本と純資産は必ずしも一致しないのですが通常、差額は些少なので一応この等式は成り立っているといえます。PERの一株当り純利益は予想利益を用いることが多いのですが、ここでは当期純利益を用います。

 この式よりいえるPBRが高くなるためには、ROEが高くなること、一方株価は将来への期待度といえます(注:そのため一般的に株式投資の指標としてのPERに使う一株当たり純利益は将来予測を使うことが多い)が、一般的には現状高いROEであれば将来も期待できるということでおおむねPERとROEは正の相関があるといわれています。ということでROEが重要といえそうです。PBRが良化しないのも、ROEが伊藤レポートで述べられた8%前後でうろうろしている企業が多いというのもあります

 一方、一株当り利益がPERの分母なので、いくら好業績で現状のROEが良くても将来性が市場から見込まれないと株価は上がらずPERは低くなり、PBRは良くならないという難しい面があります。結構PBRを高めること、単に自社の経営・財務体制だけでなく、投資家との適切なコミュニケーションも求められる指標といえるでしょう。

 実は低いPBR、かなり業界によって濃淡があります。

3.低PBRである業界

 低いPBRの代表は地方銀行で、低PBRトップ10を見ると日産自動車と日本製紙を除くとすべて地方銀行です。地方銀行は低金利と地方都市の地盤沈下で将来性がないとみられていること、そして預金業務があるので資産が膨張しやすい一方で一定の自己資本がリスク管理上求められるのでそれに対応して純資産も増えやすいという2つの面があるとおもわれます。

 一方もう一つの代表が自動車業界です。10月9日現在日産自動車が0.25、トヨタが 1.0となど実はすべて低PBR、特にトヨタでさえ1.0というのは驚きです。

日産を上記の式で分解してみると

ROE x PER=(一株当たり当期利益÷一株当たり純資産)x(株価÷一株当たり純利益)= x =6.9%x3.6=0.25

 

日産のROEは上場企業の目安とされているROE8%を割り込んでいるので、PERが低くPBRが低いのもある程度仕方がないといえます。

しかし、トヨタはどうでしょうか。

ROE x PER=(一株当たり当期利益÷一株当たり純資産)x(株価÷一株当たり純利益) =14.4%x7.0=1.0

(注:両社ともROEの分母は3月末現在純資産、1株当たり純利益も2024年3月期)

 

 ROEは14.4%と日本企業として高いレベルなのにPERは7.0、ざっくり日本企業の全業種平均15程度なので極めて低いといえます。私は株式の専門家ではないので何とも言えませんが、世の中の投資家は中国企業の躍進と円安のピークは過ぎたことなどから、あまりトヨタをはじめとした自動車産業の成長に対する期待は高くないと想像されます。その中で将来の成長シナリオをどうやって作り投資家にアピールしていくか、課題は結構大きいといえるでしょう。

 

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