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コロナ感染予防による特別損失の状況はどうなっているか?

2020.11.18 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

1.特別損失とは

 新型コロナ感染予防は様々な企業の業績に影響を及ぼしています。中には影響がない、むしろピンチをチャンスに変えた企業もあったかとは思いますがここでは負の業績への影響についてみていきます。通常の企業の営業活動、財務活動ではない事象により生じた損失は日本の会計基準では「特別損失」として計上します。
もう少しいうと

・販売目的でない資産(固定資産・投資有価証券)の売却損、評価損
・災害・盗難による損失

などが当たります。今回のコロナ感染予防による損失は一種の災害による損失で特別損失なのでしょうか?

2.コロナ感染予防に対する日本公認会計士協会の見解

 日本公認会計士協会では、「新型コロナウィルス感染症に関する監査上の留意事項(その4)で公表しています。骨子は以下です

コロナ感染防止のため

・政府等の要請等で中止したしたイベントの準備や中止に直接かかった費用
・政府等の要請等で休業した店舗の休業中に発生した固定費
・政府等の要請等で休業や操業短縮がおこなわれた際の操業度が大幅に低下による異常な原価の影響

以上のような場合は臨時性があるので特別損失としています。一方で、「経常的な経営活動等による業績不振等による損失」は特別損失に参入してはならないと同公表文で公認会計士協会は述べています。この表現からするとコロナ感染症に起因する業績不振に伴う損失は政府の要請による休業、営業停止などと限定的に書かれているのでかなり相当コロナ感染症との因果関係が明確でない限りは特別損失に入れることはできないといってよいでしょう。それでは実際どのような会計処理が各企業で行われたのでしょうか?

3.各企業の決算短信を見て

 まず、コロナ感染予防で大きな影響をうけた代表的な企業としては交通関係の企業があるでしょう。しかし、コロナ感染症の影響で大幅赤字にはなっていますがコロナ感染症に関する特別損失の記載はありません。JR東日本は税引後損失は第二四半期2643億、JR 東海は1135億でした。乗客は激減してほぼピーク時は空気を運んでいるケースもありましたが休業はしていないので特別損失は計上していないと考えられます。このようなケースは全日空(ANAグループ)も同様で税引後損失は1884億、減便はしていますが自主的な判断であって政府の要請に基づくものではないからでしょう。ちなみに日本航空は1612億の損失ですが、そもそもIFRS(国際会計基準)なので特別損益という概念がありません。ほとんどの主要自動車・化学・電機などの著名な大手製造業はIFRS移行でそもそも特別損失の項目自体がありませんでした。

 あと大きく影響を受けた企業としては飲食・小売でしょう。代表的な企業としてワタミを見ていくと店舗臨時休業による特別損失7億円を計上しています。この内容については店舗の臨時休業時の固定費(地代家賃・リース料・減価償却費等)と丁寧に説明を注記で加えています。一方大庄は新型コロナ感染症による特別損失28億計上されているだけでした。

小売業についてもセブン&アイホールデ ィングスはコロナ感染予防として特別損失353億を計上し、その中身について休業期間固定費218億 感染拡大対策費用 53億 加盟店謝金 46億・・のように丁寧に注記がされていました。一方イオンの場合はコロナ感染予防として317億の特別損失の記載はありましたが中身の説明はありませんでした。新型コロナ感染症による特別損失を計上する場合、やはり丁寧にその中身を説明する必要はあると思われ、有価証券報告書の提出の際はある程度記載が変わることを期待します

ところで特別損失として減損や繰延税金の取り崩しはどうなのでしょうか?

4.コロナによる減損・繰延税金取り崩しの影響

日本公認会計士協会企業では「新型コロナウィルス感染症に関する監査上の留意事項(その2)で公表しています。企業が新型コロナ感染症が経営成績や財政状態に与える影響について一定の仮定を置き監査人(公認会計士)はその妥当性を評価するといった手続きで画一的、機械的な処理は否定しています。ただし、会計士協会はどのような仮定を置いているのか丁寧な記述が必要と述べています。

 今のところ、コロナ感染症に伴う巨額の減損や繰延税金資産の取り崩しといったニュースはほとんど聞かないので年明けぐらいから動きが出てくるのではないかと思われます。3月決算のころもしコロナが収束しておらずその見込みも不透明であれば大きな動きがあるかもしれません。完全にWith コロナ前提で仮定せよとなれば減損や繰延税金の取り崩しの話は出てくると思われます。

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