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大手旅行代理店はリストラで新型コロナ渦を乗り越えられるか?

2020.12.01 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

1.コロナ渦での旅行代理店の大規模リストラ

JTBは11月20日に大規模なリストラ案を発表しました。骨子は以下です。

 ・約2割にあたるグループ人員6500人を削減し、22年度の新卒採用を見合わせる
 ・月給賞与を合わせた総額の3割削減
 ・国内で115店舗、海外で190店舗以上削減
 ・グループ会社も10店舗以上減らす
   
近畿ツーリストとクラブツーリズムを傘下に持つKNT-CTホールディングスは以下のようにもっと大胆なリストラとなっています

 ・グループ人員約7000人の3分の1の人員削減
 ・個人旅行店138店舗を3分の1へ
 ・団体旅行店90店舗から70店舗へ
 ・パックツア―「ホリディ」「メイト」の廃止
 ・役員報酬・従業員給与の減額
  

ただ、確かにKNT-CTの上半期決算を見るとほぼビジネスが消滅したといってもよいすさまじいものでした。少しここをいていきましょう

2.すさまじいKNT-CTホールディングスとJTBの決算

KNT-CTホールディングス上半期の前期は以下です。

売上 2150億円⇒159億円
営業利益(損失) 34億円⇒損失231億円
経常利益(損失) 34億円⇒損失157億円

助成金収入69億円があったので経常損失が減りましたが、それでも大幅赤字で前期末184億円の純資産が一気に上半期で12億円まで減少して債務超過が見えてきています。

 そもそもKNT-CTはコロナ前から自己資本比率20%と財務体質が脆弱でした。また、ここ5年間の決算で3回の最終損失で赤字と業績ももともと低調でした。親会社の近鉄グループホールディングスが過半数の株式を所有していますが、支援がどれだけうけられるのでしょうか?当然親会社の業績も上半期437億円の赤字とコロナ渦で苦しい状況です。

 JTBは上場会社ではないのであまり細かい開示はありませんが、売上6860億円⇒1298億円 純利益 44億⇒純損失782億と同様にすさまじい結果でした。JTBも前期末まで売上げは1兆以上あるものの最終損益は10億~50億と低調でした。そして自己資本比率も24%程度と財務体質の脆弱さはあまりかわらない状況です。

 GO TOトラベルが大手旅行代理店支援だと批判を浴びましたがここまでの惨状をみると支援もある程度は必要ではないかと思いました。しかし、これはそもそもすべて新型コロナに由来するものなおでしょうか?

3.大手旅行代理店の苦悩は新型コロナだけか?

 今回の上半期の決算に限って言えば、新型コロナという天災によるものが大部分とは言えます。ただし、デジタル化への遅れが根本的な部分としてあるといえます。日本観光振興協会などの19年の調査によると、観光関連のサイトの年間閲覧数(スマホ向け)は「じゃらんnet」が首位。「楽天トラ
ベル」が2位だった。大手旅行会社ではエイチ・アイ・エス(HIS)が7位、JTBは10位にとどまっています。ネット上ではもうすでに旧来の大手旅行代理店の存在は既に薄くなりつつあったと言えます

 こういったJTBやKNT-CTなどの大手も全く手を打っていなかったわけではないですが、徐々に進めるという感じでした。今まで、このデジタル化の波により低収益で、徐々に体力を蝕んできたにも関わらず素早く手を打っていなかったともいえます。いいかえるとゆでがえる状態だったのが新型コロナという熱湯がいきなり注がれたといえるでしょう。さて、旧来の大手旅行代理店は今後生き残れるのでしょうか?今後の旅行需要のシフトを考えればリストラだけでは一時処置にすぎないということは自明でしょう。

 KNT-CTはの場合、クラブツーリズムの700万人会員のデータベースを活かした個人旅行だけでなくライフスタイルビジネスに転換して趣味を中心としたコミュニティの運営に注力していくようです。そして、団体旅行は一定の専門的な分野だけに絞り込む方向です。これがどれだけ有効かは正直わかりませんが大胆な方向転換であり、今後注目していきたいところです。

 

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