ブログ

HOME > ブログ > 企業経営での留意点 > 企業の業績分析 > イオンは本当に劣後ローンでEC強化をはかれるのか?

イオンは本当に劣後ローンでEC強化をはかれるのか?

2020.10.28 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

1.イオンの資金調達

 22日の日本経済新聞でイオンが劣後ローンでみずほ銀行や日本政策投資銀行などから計600億円を「劣後ローン」の形で調達すると伝えました。それによるとネットスーパー事業の強化に充て、配送センターや、ピックアップロボットの導入や人工知能(AI)を活用した配送ルートの策定などを考えているようです。

 しかし、よく考えてみると以前当ブログで取り上げましたが、ここ数年でアメリカのウォルマートがECに投じた金額が235億ドル(約2.5兆円)ですから2ケタ違います。

https://hands-on-cfo.com/blog/walmart/

 正直なところ年間収益8兆円の巨大企業としては投資のためにわざわざ調達するには小さな額です。実際のところどうなのでしょうか?当然ECには投資しなければいけないという事があることは確かですが、それを自己資金で行えない程度財務体質が悪化しているというのがその裏にはあると思います。少し財務体質見ていきましょう。

2.イオンの財務体質の悪化

 自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)をみるとは12.2⇒10.9⇒9.6と下がり続けて2020年2月期はついに左記のように一けたの9.6%となりました。金融業の比率が高いので低めになるという面はありますが、金融業の部分を除いた数字も開示されていますがそれを除いても17.2%と低いです。自己資本比率が低いという事はかなり財務面のリスクが高い(資本は返済不要だが借入は返済が必須)という事で一般的に30%を割るとかなりリスクが高いと言われています。

 もう少し中身を見るためデットエクイティレシオ(DEレシオ)、いわゆる有利子負債に対する自己資本の割合を見てみましょう。イオンの有利子負債は増え続けDEレシオ(有利子負債÷自己資本)は2.65倍、つまり自己資本の2倍以上借り入れがあるということです。かなり借入過多で財務内容は悪いと言えます。そこで今回の劣後ローンによる調達という事になったといえます。ところで劣後ローンとはなんでしょうか?

3.なぜ劣後ローンだったか

 劣後ローンとは返済順位が普通の借入金よりも低い借入金です。つまり融資した企業が倒産した場合、当該企業が他の債務を全て弁済した後、資産が残っていれば劣後ローンの返済に充てられることになるのです。したがって、性質としては資本に近いので自己資本比率やDEレシオの計算においては、一部自己資本に入れても差し支えない訳です。開示では「格付機関(株式会社格付投資情報センター、及びS&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社)より資金調達額の50%に対して資本性の認定を受けることを見込んでおります」と述べています。

 ちなみに、格付機関とはざっくりいうと社債などを発行する際にどの程度のデフォルトリスクがあるか財務分析等で格付け(評価)する機関でその評価がリスクが高いと社債発行時の金利が高くなってしまうので格付け期間がどう評価するかは社債を発行する企業は非常に気にします

 まとめると、年間収益8兆円の巨大企業としては投資のためにわざわざ調達するには小さな額で、財務体質を悪化させないように資金を調達できるときにしておいたというのが実態に近いと思われます。以下で見るようにやはりコロナ感染予防で業績的には今期苦戦のようです

4、イオンの今期の業績

 2020年8月末の第2四半期決算が少し前に発表されましが 当期の経営成績(親会社に帰属する損失)は575億円のマイナスとなりました。コロナ感染によるものが大きくコロナ感染に関する損失等で500億の特別損失を出していることが主たる要因です。セグメント別にみるとコロナの影響としてはまだらな感じでSM部門(食品スーパー・コンビニ等)やヘルス&ウェルネスは好調でしたが、GMS(総合スーパー)やディベロッパー(モール運営)やサービス専門店や総合金融はモールの緊急事態宣言による休止でかなり苦戦したといえます。

 実際に営業キャッシュフローが796億のマイナスで800億円近いキャッシュが流出しているのは手元資金が1兆円あるとはいっても気になるところといえるでしょう。ただし、今回の資金調達は会社の規模的にも一時しのぎであり今後おそらくコロナの行く末にある程度目処が付いたあたりで一度抜本的財務体質の改善が必要といえると思われます

関連記事
TOP