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会計士が足りないことに関して思うこと

2017.10.30 カテゴリ: 会計・税務会計監査

土曜日の日本経済新聞に「市場の番人」たる会計士不足が載っていました。あずさ監査法人は人員不足による現場の過重労働が酷いため新規受注をやめたようです。一方新興企業などは引き受ける監査法人がいないため上場に支障が出ているようです。

日本の問題として米国に比べ監査費用が4分の1と低額で監査報酬は不正や不適正な財務諸表作成を防ぐための必要コストと考えているのに対し、日本企業はその意識が低く、不要なコストと考えとにかく削減を考えているというような論調もみえました。私は会計士ですが監査法人を離れて久しくどちらかというと企業寄りの立場ではありますが、きちんと「質の良い監査」をしてもらうことは重要でそれに応じたコストは必要経費として企業として負担すべきと思います。

しかし、現状企業側から見て監査法人は「質の良い監査」を本当に行っているのでしょうか?監査チームはインチャージと言われる現場責任者とスタッフ数人(これは会社の規模による)で大抵会社に来ており、そこにマネジャーとパートナーと呼ばれる管理者が進捗や監査内容についてレビューやチェックを行うような形で進んでいます。しかし、企業側から見るとインチャージは朝から晩までパソコンに向かってひたすら審査資料と呼ばれる本部の品質管理資料を作成しているだけ、スタッフは山のような確認状と呼ばれる残高照合の資料を要求して朝から晩まで突合して少しでも帳簿と差異があるとひたすらその差異を埋める作業をするだけのような気がします。本来の投資家の判断を誤らせるような重要な虚偽記載や誤りを発見する業務に割いている時間はあまり多くなく、無駄な突合や内部資料作りに割く時間が多いのではないかというのが印象です。マネジャーやパートナーは本来判断をする方々と思うのですが、複雑な会計処理の判断は「本部の品質管理に聞いてみます」で全く判断をせずにやたらと時間がかかります。企業側の会計処理が正しくないと判断をすることはあってもよいと思うのですが、要するに「本部の品質管理がダメといっているので・・・」できちんと企業側を納得させるような説明さえまともにしません。

私は個人的な感覚として、監査チームの人たちは人としては誠実でまじめな方々が多いのでそのような現状に徒労感と絶望感を抱いています。監査を行う会計士が足りなくなる原因の一つにこの徒労感と絶望感がある気がします。きわめて監査という業務が形式主義化して、企業側のリスクを見定め不正や虚偽記載を発見することよりも監査法人のリスク回避のための監査手続きに偏っている気がしてなりません。

今大きく監査という業務の在り方、見直さないと長い目で見た日本企業の体力の衰退の原因の一つになると思うのですがいかがなのでしょうか?

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