実はM&A巧者であるドンキ(PPIH)
2019.07.15 カテゴリ: M&A、企業経営での留意点。
目次
1.好調なPPIH
ドン・キホーテ(2019年2月にパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス:PPIHに社名変更)が業績が低迷する企業が多い小売業界において好調です。今期の業績予測でも売上は約1.3兆円、経常利益670億で前期の約0.9兆円、経常利益572億円の模様です。どうやら営業利益ベースではローソンを抜いて小売業界第5位になったと昨日の日本経済新聞が伝えていました。その中の要因の一つとして、さほど知られていないようですがなかなかのM&A巧者であるといえます。それでは昨年発表されたユニー㈱のM&Aを見ていきます。
2.ユニー・ファミリマート・ホールディングス(ユニー・ファミマHD)との業務提携
PPIHは昨年11月にユニ-ファミマHDと資本業務提携をしました。その中身は今まで40%所有していたユニーの株を買い増し100%子会社にすること、一方ユニーファミマHDから約20%の出資(正確にはその子会社からの出資)を受けて資本・業務提携をするというものです。ユニーファミマHDとしてもそもそもほしかったのはコンビニ業のサークルKサンクスであって、GMS(総合スーパー)であるユニーではなかったはずですから渡りに船だったと想像されます。
ここでこの買収交渉として巧みなのはユニーの純資産上の株価である45万円の約半分である23万円で購入しており、高値掴みしていないことが挙げられます。加えて、PPIHの株式についてはTOBでマーケットからの購入なので創業者グループの持分は希薄化せずに影響力を保持しつつ、ユニー・ファミマHDグループに入るといった絶妙なバランス感がそこに見られます。
3.ユニー子会社後の動向
まず、ユニーの旧店舗であるアピタ、ピアゴについては2023年までにすべて新業態であるダブルネーム店(MEGA)ドン・キホーテUNYに転換の予定とすぐに発表しました。そして(MEGA)ドン・キホーテUNYに転換した6店の業績について5月の決算説明会で発表しています。それによると売上2倍、粗利1.7倍、赤字から5億近い営業黒字に短い間に転換しています。要因としては客層に若年層とニューファミリー層が加わり客層が厚くなったこと、でしょう。私は実際に足を運んではおりませんが、写真等で見るといわゆる「ドンキ」のごちゃごちゃした陳列で完全にドンキ流でやっているようです。
私にはユニーから得るものは場所(店舗)と食料品の取り扱いについてのノウハウでその他は基本的にドンキ流できっちり染めていくという方針に見えます。特に個店主義で品ぞろえについては現場に任せるといった方針は一切曲げていないようです。
4.PPIH成功の要因
PPIHがM&A巧者というのは単に高値掴みをしないといった単なる交渉上手といったことではないと思います。本当の強みはM&Aで目指すことがはっきりと決まっていて、戦略がシンプルかつ明確でかつきっちりそれに従って事業も進めているということが言えます。よくある抽象的な対等な精神とかシナジーなどの抽象的な概念がいろいろな発表資料ではみられません。
ユニーの買収に関しては店舗ロケーションを得るという目的が明確ですし、一方ユニーファミマHDではその親会社の伊藤忠商事も含めた海外進出のノウハウを手に入れる、コンビニ形態のノウハウも巧みに吸収するといった明確な方向性がよくわかります。
おそらく今後の日本の人口動態を考えてもPPIHの中心はアジアに移っていくと思われますが、このような方式が海外でも通用するかそのあたりは興味深いところでしょう。