日産自動車や神戸製鋼にみる日本型不正のパターン
2017.10.19 カテゴリ: 企業経営での留意点、会計不正。
日産自動車における無資格検査や神戸製鋼におけるアルミニウム製品の強度不正など日本を代表する大企業の不正が続いています。日産のケースも納期を守るため神戸製鋼の場合は生産目標の達成や納期を守るためと言われています。日本型不正の特徴はこのような「部分最適的な組織防衛の本能」がその根底にあるような気がします。したがって、どちらかというと「空気」で行い誰か特定のリーダーがトップダウンで行うものではないケースが多いです。そのため、文書や具体的な指示はなく、本人たちも悪くない、または多少悪いと思っていても必要悪ぐらいに思っています。その結果内部監査などでは発見しにくいケースが多いわけです。
一方欧米企業的な不正はその根底は「Greedy (貪欲)」と思われます。トップダウンで行われ完全な利益至上志向です。本人たちも悪いことだという意識はありますがとりあえず(グレーではあっても)法令違反ではなく、巨額な報酬や昇進に目がくらみ善悪の基準が麻痺しまっています。わかりやすいのは欧米のサブプライムローンや粉飾決算をやったエンロンなどの例でしょう。日本でも私は一部の銀行が複雑でリスクの高いデリバティブ商品などをあまり知識のない方や企業に売りさばいていた例や相続税対策と称したアパート商法(バックファイナンスを付けたアパート建築で住宅メーカーと銀行が丸儲けする仕組み)などは広い意味で不正の部類に入ると思っています。このケースは現場トップに悪意があっても経営陣に倫理感さえあれば内部監査などで発見はしやすいです。完全な指揮命令のもとにおこなわれていますから。ただし、これもまた発覚しにくいのはその経営陣が主導しているケースが多いからでしょう。
欧米型と日本型の不正を比べてみると欧米型は「攻めの不正」なのに対し、日本型は「守りの不正」だといえます。欧米型で大ごとになってしまうのは本当にトップから会社の体質が腐っていたのに対し、日本型は本当にトップが知らないケースはあるのではないかと思います。したがって、私は「日本型不正」に対し「会社全体の倫理観の欠如」などというのは的が外れた論点に感じます。
この「日本的不正」を防ぐのはどうしたらよいでしょうか? 迂遠な方法に思えますが基本的には多様性(ダイバーシティ)だと思います。どうしても「日本的不正」を起こしやすい組織は同質性を重んじ異質を排除しがちです。他社から来た人や女性、外国人などはすぐにこのような不正が行われている組織に来れば「おかしい」と思うはずです。組織の中の風とおしをよくするというのはこういった異質な人々を取り入れ多様性(ダイバーシティ)を浸透させることではないでしょうか?