西武信金への業務改善命令で疑問に思ったこと
2019.05.27 カテゴリ: 企業経営での留意点、経営戦略、経営理念。
目次
西武信金への業務改善命令
東京都の西部を主たる地盤とする西武信用金庫が関東財務局より5月24日業務改善命令を出されました。「業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った結果、以下のような問題が認められた」と関東財務局は指摘しています。
1つめは投資用不動産御融資で持ち込み業者による融資関係資料の偽装改ざんを黙認や経済耐用年数を証明する外部専門家に対し耐用年数・修繕費を職員が指示したことです。2つ目として反社会勢力と疑われる企業にその情報を得ていたのにも関わらず融資をしていたという点です。 2つ目については新聞記事などを見るとどうやら暴力団の関係者と疑われる人物の親族が経営する企業に融資をしており、その疑いについて監事が指摘していたのにも関わらず落合理事長は調査を拒否したということのようです。
一般的に反社会勢力と疑わしいとトップが知りながら融資を行いかつ継続してしまったら、いわゆる一発レッドカードと言えましょう。私もかなり昔に政府系金融機関の融資担当者でしたが、さすが暴力団関係者がそのまま融資を申し込んでくることはなく、多かったのが妻、内縁の妻、愛人関係を社長としているケースでした。したがって、女性経営者の土木建設業(当然理系の大学(院)卒などは除く)は要注意でした。あくまでも想像ですが理事長は何かしら弱みを握られてしまい、暴力団との関係ができてしまったのかもしれません。成長企業などはなかなかおいしいネタですから。
一方1つ目の投資不動産融資の問題ですが、これも確かに問題ではありますが、あくまでもこの金融庁の記載や新聞記事名を見る限りスルガ銀行の案件とはずいぶん違う気がします。これは後ほど詳しく説明したいと思います
信金の雄であった西武信金
西武信金と言えば首都圏で一番元気な信用金庫として有名でした。数字の伸びも融資残高は平成21年度の8916億円から29年度には1兆6618億円まで伸ばし、業界No1の融資の伸び率だったようです。そして預貸率(預金に対する融資の割合)85.87%で業界平均50.12%を大幅に上回っています。預貸率が高いということは一般的に利息を生む資産が多いということで利益も良くなります。
その結果平成29年度の純利益は89億と信用金庫ではトップクラス、地銀でも中上位行レベルの利益をたたき出していました。しかも不良債権比率も0.96%とかなり業界よりも良好で数字を見る限り素晴らしい信金と言えます 。私も多少付き合いがあったのですが起業支援、事業マッチングなどにも非常に熱心で職員も非常に元気の良い方が多く非常に印象はよい金融機関ではありました。ただ、確かに良くも悪くもイケイケな感じの方が多いのでお役所には目を付けられやすい可能性は当時からあったかもしれません。/p>
スルガ銀行とは異なる投資不動産融資
投資不動産についてはあくまで印象ですが「緩めの融資」はしていたがかなり内容はスルガ銀行とは異なる気がします。スルガ銀行の融資の問題点はかぼちゃの馬車運営会社など反社会的業者と結託して、借手に不利な物件を高利でかつ借手の信用状況を組織的に改ざんして無理な融資をしていたものです。
この西武信金での融資関連書類の改ざんはとりあえず表に出ている情報でスルガ銀行のように酷い案件は見当たりません。 加えて耐用年数の問題点について少し掘り下げてみます。この根本的な問題点は融資期間>耐用年数であれば確かに融資の返済の原資は家賃ですから、耐用年数を過ぎて貸家がボロボロであれば入居者はいなくなりますから将来焦げ付く可能性が高くなることでしょう。
ただ、「法定耐用年数」はあくまでも税務署が定めた目安で物件によって「経済耐用年数」、いわゆる実質的に使える状況の年数を使うのは融資側の裁量の範囲内だと思います。そして修繕、いわゆるリフォームをして長く住めることを計算して経済耐用年数を伸ばして考えること自体は決して不合理、不正ではないと思われます。しいて言えば、専門家に信金側から働きかけて書類を作らせたという点かもしれません。しかし、専門家もあくまでも一般論ですが専門家としての倫理があるので明らかに不正な評価に加担する専門家が多くいたというのは考えにくいです。
あくまでも記事等で知りえた情報をもとの私見ですが、この点に関しては不正というよりも「投資用不動産に対する融資」を絞ろうとした財務省のみせしめになった感は強いと思われます。