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スシローはなぜコロナ禍でも最高益を達成できたのか?

2021.05.12 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点経営戦略

1.スシロー最高益達成

 コロナ禍で苦しい業態の一つに外食産業があります。しかし、コロナ禍で2021年9月期決算の上半期、最高益を回転すしのスシロー(現FOOD&LIFE COMPANY)が達成しました。

結果は、
売上1190億(前年同期比10.1%増)
営業利益131億(同59.2%増)
当期利益77.6億(52.7%増)

です。回転すしは郊外型が多いですし、デリバリーやテイクアウトもそれなりに可能なので当然と考える方もいらっしゃるのですが同業でも明暗をわけていて業界2位のくら寿司の第一四半期は大幅減益でした。

売上は388億((前年同期比8.2%増)
営業利益 8.2億(-31.3%)
経常利益9.2億(-32.9%)

ちなみにくら寿司は10月決算なので上半期決算はまだです。かつ昨年の10月決算では最終赤字に転落しています。少しこのスシローの好決算の理由を探っていきたいと思います

2.スシロー好決算の理由は自動化か?

 スシローはくら寿司に比べ自動化が進んでおり人件費が低い、また100円均一にこだわっている、くら寿司に比べスシローは柔軟に価格を設定しているので粗利が高いといった事が記事などがネットの記事を見ると取り上げられていました。本当でしょうか?少し見ていきます。

一般的に飲食業の経営成績を見る指標として売上高FL比率(F:Food 材料費 L:労務費)があり、利益を上げていく場合FL比率を60%程度に抑えると飲食業経営の教科書などには書いてあります。ところが、2020年度の決算で見るとくら寿司(72.9%)スシロー(77.9%)(注:売上原価を材料費と仮定)でともに非常に高く、かつスシローの方が高いです。

 R(Rent:家賃)もいれたFLR比率でもくら79.6%、スシロー82.6%とスシローが高いです。
これを見ると本来はともにかなり経営は苦しく、スシローの方がより経営成績は悪くなるはずです

 原価率で見てもスシローは47.4%、くら寿司は44.8%でくら寿司の方が低く、少なくとも財務数値を表面的になぞっただけではスシローの好調の理由はわかりません。価格戦略で粗利を取って、効率化で人件費を下げているのでしたらFL比率はくら寿司よりもFL比率は低いはずです。

 それでもくら寿司よりもスシローの方が圧倒的に業績が良い理由は売上に対して食材費・人件費・家賃以外のその他の費用?が非常に低いというよくわからない結果となります。

 

3.スシロー好業績の理由のヒント

 はっきりとしたことはわからないのですが少しヒント的なものを見ていきます。まずは、労働生産性を見ていきましょう。労働生産性とは労働者一人当たりの付加価値額で、一般に外食産業は「労働生産性は低い」といわれています。日本生産性本部の2017年データによれば宿泊・飲食サービス業は335万、薄利多売体質で競争が低くなりがちです。ただ、回転寿司業界は自動化が進み比較的業界の中では生産性が高いです

 スシローの場合労働生産性は業界でも非常に高くさらに毎年改善しています

2015年 437万
2016年 448万
2017年 455万
2018年 474百万
2019年490万
2020年 496万

(注:付加価値として便宜的に売上総利益を用いています)

 このあたりすしロボット、タッチパネル、AI画像認識により価格計算など先頭をきって自動化にかじをきっていることがあげられます。そして、たんなる自動化ではなくサイトも含めた注文から食事・持ち帰り・会計までをいかに省力化し、アクティブユーザーの行動データをフィードバックする仕組みも構築している点もこのあたりに現れているのではないでしょうか?

一方労働分配率(人件費÷付加価値)はスシロー54%、くら51%です。スシローは原価ぎりぎりの商品を提供し、省力化して労働生産性はどんどん高めていますが労働分配率はくら寿司より高く、よく言えば従業員にきっちり配分しているといえます。そのあたりお金をかけるべきところにはかけ、削るところはしっかり削るという体質がその他の費用を削り高収益体質を創っているのではないかと想像されます。細かい実態は財務数値だけでは不明ですが。

 

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