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ウォルマートの最近の動向からセブン&アイホールディングスの米国における買収を見る

2020.09.30 カテゴリ: グローバルビジネス企業の業績分析企業経営での留意点

1.コロナ下で業績を伸ばしたウォルマート

24日の日本経済新聞にウォルマートの好調な業績に関する解説記事が載っていました。非常に興味深いので以下骨子をまず、ご紹介したいと思います

 ウォルマートはコロナ期でも業績を順調に伸ばしています。2020年5~7月期の売上高は1377億ドル(約14.5兆円)とと前年同期比6%増でした。その理由としてウォルマートがEC(電子商)化にかなり舵をすでに切っていたことがその要因として挙げており、その指標として無形固定資産比率の変化に言及していました。
 
 無形固定資産比率とは無形固定資産が総資産に占める割合で2020年1月決算時は15.3% 2016年が9%程度だったので、6%程度上昇したことになります。具体的には例えば何をやったかというと全米で5300を超える店舗網とネットを結合させたサービスを展開しました。これはクリック&コレクトとよばれ、お客がネットで商品を注文してくるまで店舗を訪れる店員が来るまで商品を積むという仕組みです。コロナ感染予防の下、非常に好評でした。そのために決済や注文に関するシステムやEC関連に235億ドルを投じています。

 このような投資は続けていますが、総資産回転率(売上÷総資産)2020年現在2.4でずっと安定的です。これは多額の投資をしてもきちんと効率的に運用され、売上に跳ね返ってきていることを示しています。さて、一方日本の小売業はどうでしょうか?

 

2.日本の大手小売業はどうか

代表的な大手2社を見てみましょう。セブン&アイホールディングスは3~5月で売上約1.4兆円で12.8%の減収、イオンは売上約2.1兆円で1.9%の減収で、ともに苦戦の状況でした。総資産無形固定資産比率はそれぞれどうでしょうか?セブン10.1%、イオン2.7%とウォルマートと比べるとかなり低い状況です。ただし、この2つのグループとも銀行業というわりと総資産が膨らみやすい業態を持ってますので無形固定資産の有形固定資産に対する割合を見てみましょう。

 ウォルマート 28.5%に対し、イオンは9.8%とかなり低いですがセブン&アイは27.8%とほぼ同様のレベルを保っています。ただし、コンビニエンスストアがフランチャイズが多いため有形固定資産を持たないというモデルの違いを考えれば数字的には同様でも無形固定資産などの投資比率は実質的にはかなり低いかもしれません。

 一方、総資産回転率を見るとウォルマートは2.4に対し、セブン&アイは1.1、イオンは0.8とかなり効率が悪いです。銀行業がありで総資産が膨らみ気味といっても資産効率の悪さが目につきます。まとめると、日本の小売業効率的に投資ををするという面ではまだまだ米国の巨大企業に比べると、有形固定資産といったハコモノだより、資産効率性の面でも後塵を拝しているかもしれません。
 

 ただ、今回セブン&アイは大きな買収という方向にかじを切りました。これはどう見ればいいでしょうか?

 

3.セブン&アイの買収をどう見るか

 セブン&アイホールディングスがMarathon Petroleum Corporationからコンビニ事業Speedwayを買収すると2020年8月3日発表がありました。その結果、米国セブン&イレブン9802店舗に今回約3900店が加わる事になります。この21,000百万ドル(約2.2兆円)の買収により主要50都市のうち47都市に拠点ができます。現在被買収事業のEBIT(税引前ネット利息控除前利益)960百万ドルしか開示されていませんがおそらくEBITDA倍率(買収価額÷EBITDA)は15倍前後くらいではないかと想像され一般的には高い買い物になりそうです(EBITDAはEBITに減価償却費を加えたもの。かなり営業から生じるキャッシュフローに近い概念です。つまり何年くらいで買収価額を取り戻せるかがわかり当然低い方がお得な買い物です。そして、一般的には適正なEBITDA倍率は10倍程度といわれています)
 

 ただし、3000百万ドルレベルの節税効果や475~575百万レベルの統合効果があるという開示を信じれば同倍率は10倍程度と一般的には妥当なレベルに収まるとは思われます。また、純資産は7085百万ドルと発表されていますので単純に計算すると13,915百万(約1.5兆円)の巨額ののれんが計上されることになり、借入金等、負債での調達となると発表しておりますので財務内容は一時的には悪化すると思われます。

 しかし、ここでの注目は単に店舗が多くなる量的な拡大なのか店舗網を生かしたオムニチャネル効果(リアルとECの相乗効果)を目指したものなのか?そのあたりこれからが注目されますただし、今回被買収事業の商品売上 6284百万ドルに対し、燃料売上 20,273百万ドルといわゆるガソリンスタンドとしての機能の方が大きいですからそういった意味では量的拡大の方向性の方が当初は強いかもしれません。
  

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