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コロナ禍で配当総額を4倍以上に伸ばしたラクーンホールディングスとは

2021.08.04 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

目次

1.日経MNEXT1000

 日本経済新聞で売上高100億以下の上場企業「NEXT1000」において3年前と比べて配当総額の伸び率が大きかった企業を特集していました。新型コロナウィルス禍でも株式還元を伸ばした企業どんな会社があるかとみていましたがランキング2位にラクーンホールディングス(以下「ラクーン」)がありました。この企業はコロナ禍前いわゆる3年前に比べ配当総額を4.13倍に伸ばしています。

 これは配当性向(配当額÷税引後利益)を2021年4月期より約3割から5割に伸ばしたこともあります。ただPER(株価÷一株当たり利益)が63.29倍と非常に高いので配当利回りは0.73%(8月2日の数字 1株当たり配当÷一株当たり利益)と低いです。

 あくまでの私のざっくりとしたイメージですgインターネット企業のPERは30倍くらい、ラクーンのPERは高くよく言えば株式市場から非常に評価されといえます。悪く言うと割高といえるかもしれませんが。株価が高いので配当利回りが非常に低くなってしまい、配当性向をあげて還元度を強めていると言えるかもしません

 とりあえず有価証券報告書を見ると2017年4月期から5期連続増収増益、2021年4月期のROEは17.2%という優良企業企業でしょう。ではこの会社どんな会社なのか見ていきましょう

2.ラクーンとは

 ざっくりいうとラクーンEコマースとフィンテックの会社です。Eコマース部分はス-パ―デリバリーというショッピングモール型のBTBサイトが主力商品とおもわれます。ターゲット商品はアパレルと雑貨で零細小売店とメーカーをつなぐ問屋的役割といえます。本来メーカーは零細小売店にも販売したいですがが信用リスクと営業管理コストの問題があって直接の取引はできず問屋を通していました。これをス-パ―デリバリーという仕組みで解決したのです

 加えてコロナ禍で対面で問屋から仕入れていた小売店がサイトにシフトして会員小売店数は22万と前期比約3割増加、出展企業数も2663社と4割近く増えました。コロナ禍はむしろ追い風であったといえるかもしれません。収益構造としては会員企業からの会費と出展企業であるメーカーからの販売手数料です。

 当然BTBサイトの作りこみによるマッチング・決済機能という点でもすぐれているとおもわれますが、会員小売店の信用調査・管理という点が実は強みなのではないかと思われる部分あります。そのあたり見ていきます

3.少し驚く財務数値

 財務数値をみて一見驚くのは売上と売掛金の割合です。売上は43億ほどななのに売掛金が48億もあります。一般的にはこれは危ない企業の典型です。売上の1年分以上の売掛金があればそれだけ支払われない不良債権があるとも思えてしまいます

 ただ、この企業は信用仲介機能を持っているので売上に計上される手数料等ではなく取扱高に対応して売掛金が計上されます。したがってこのようなアンバランスなPLとBSとなるわけです

 ただし、信用仲介機能を持っているのでやはり零細小売店の信用をきちんと調査・管理していることは重要です。そうでなくてこの実際の売上ではなく、取扱高に対して売掛金が立つということはそれが貸倒た時のリスクは大きいといえます。したがって、信用リスクの調査と管理が大切です。そしてそれが実は強みではないかと思われるのがフィンテック事業への展開です。

 いわゆる売掛債権保証、決済代行、家賃保証の3本柱でフィンテック事業は行われています。共通点はすべて保証料を取って収益とし、その一方回収不能になった際には立て替えるというビジネスです。これも同様に信用調査と管理が大切となるビジネスでしょう。保証料に対して貸倒が発生した時の立替額は非常に大きくなります。おそらく、なにかしら信用リスク調査と管理のすぐれたアルゴリズムなどを開発しているのではないかと思われます。

 つまり、単なるマッチングプラットフォームのIT企業ではなく、なにかしら信用リスクの調査と管理に強みを持つため、業績を伸ばしているのでないかと想像しているわけです。

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