復活しつつある百貨店の秘密
2023.07.27 カテゴリ: 企業の業績分析、企業経営での留意点、経営戦略。
目次
1.百貨店の復活?
一時期百貨店は終わったという話がありました。日本ではそごう・西武がファンドへの売却交渉中、また地方では島根県で一畑百貨店が閉店することになり、徳島・山形に続く百貨店ゼロ県となりました。今後も地方では百貨店閉店が相次ぐのではという話があります。アメリカでもニーマンマーカスやロード&テーラーなどが倒産、JCパニーやシアーズはファンドの傘下に入りました。
しかし、実はコロナ禍がひと段落した2022年度決算、実は百貨店は絶好調です。例えば、2023年2月期の高島屋の決算を取り上げると16年ぶり最終益276億円と最高益を更新新宿、新宿伊勢丹がバブル期を超える3276億円と最高の総額売上を達成、24年3月期には営業最高益を見込んでいるなど好調です。
これは単なるコロナ禍の反動であるリベンジ消費とインバウンドといった訪日外国客の戻りなのでしょうか?単なるリベンジ消費であれば今期四半期決算あたりから息切れが見えるはずです。少し、そのあたりみていきます。
2.高島屋第一四半期決算
現在第一四半期の結果が分かるのが2月決算の百貨店なので高島屋の3~5月の四半期決算をみます。コロナ前の2019年度第一四半期(2019年3月~5月)と比べてみると総額売上収益2176億でコロナ前の2237億と比較して△2.7%と微減、しかし、総額売上収益に対する販管費率が28.2%から24.7%に大幅に下がったため営業利益では110億と、コロナ前の77億を大きく上回りました。コロナ禍において販管費をかなり削減したことが利益に貢献しています。
これを決算資料で細かく見ていくと、実はインバウンドを除く総額売上収益では2019年度を上回っています。ただし、インバウンド総額売上収益だけを見ると2019年度の158億から109億と約50億低くちょうどこの部分の落ち込みが2019年度対比ではマイナスとなったといえます。まだまだ、訪日中国人が少ないのでこの部分の落ち込みが激しい一方、それ以外のインバウンド消費については2019年度を大幅に上回っているといえ、まとめると営業利益の好調は販管費の削減による部分は大きいですが、実は百貨店は終わったと言いつつ、コロナ前の売上をインバウンド除いた数字で上回っていることが大きいです。つまりインバウンドでも単なるリベンジ消費でもなさそうです。それでは何でしょうか?
3.外商、富裕層ビジネス
そのカギの大きな要因は富裕層にかなりターゲットを絞り始めていることとみています。実はこの富裕層をターゲットとした外商は百貨店の売上の20%以上を占めていると言われて、粗利ベースでは半分近いのではともいわれています。
実は少子化・人口減少などといわれながら増えているのが富裕層・超富裕層の世帯数です。野村総合研究所によれば日本の富裕層は149万世帯(純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の富裕層は139.5万世帯で同5億円以上の長富裕層が9.0万世帯)その純金融資産総額は364兆円と発表しています。そして、2013年以上この世帯数は実は増加し続けています
その富裕層をターゲットにしたのが外商、コロナ禍で手法に磨きをかけていたのが実り始めたといえます。そもそも我々一般庶民には縁がないですが、百貨店の外商担当者が富裕層得意先を回り、提案営業をする仕組みです。当然外商のお客様は来店時もVIP扱いで専用ラウンジや無料駐車場が使えます。当然買い物の額も数百万~レベルです。
コロナ禍にデジタル化による個別対応に磨きをかけた百貨店は大幅に業績を伸ばしているといえます。業績をざっと見るとこのあたりをしっかりとらえたのが、三越伊勢丹、高島屋の2社は確実にとらえていた感は強いです。このあたりの巧拙でここ数年間の業績は決まっていくのではないでしょうか。