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会計不正はなぜ増え続けるのか?

2020.08.18 カテゴリ: CFO会計・税務会計不正会計監査社会問題

1.国内会計不正が大幅増加

 8月10日の日本経済新聞に2020年3月期は国内会計不正が増え「101件と前の期から7割増え、5年前の3倍だった」という記事が出ました。その中で「15年の企業統治指針導入で社外取締役の採用拡充など経営監視の体制作りは進んだが、実効性にはなお課題がありそう」などとありますがその通りなのでしょうか?

 まず、ここで載っているのは「会計不正ばれた数」なので極端な話「ばれていないすべての会計不正を網羅した数ではないことが注意点です。これをもって「会計不正を行っている企業の数が増えた」かどうかはわからないです。一方会計不正の数と社外役員の数の相関性はどうなのでしょうか?今までの会計不正を見て
例えば自分が社外役員でいたら事前に防止できたのでしょうか?その前に会計不正のパターン見てみましょう

2.会計不正のパターン

 会計不正の大きなパターンは架空売上、在庫の過大計上、経費の付け替え、損失の隠蔽(含む連結外し)といったパターンで多分架空売上がお手軽で一番多いと思います。そして架空売上で多いのが直送売上がらみとと循環取引です。直送売上とは会社CはA社から購入してB社に販売、でもモノはA社からB社に直送されるC社では注文書を出す、請求書の発行をするという書類があるだけといった取引です。この直送自体は一般的には問題のある取引ではないですが、留意点はA社もB社もC社のなにかしらコントロール下にある場合、書類を作るだけで簡単に売上が計上できてしまう事です。C社がA社に払ったお金をこっそりB社に還流させてB社がC社に払う仕組み作ればしばらくはごまかせます。

 循環取引はソフトウェアなど形がないモノを販売する際に行われる場合が多いです。そして以下のようにA~D社までがみんなグルです。売上のフローですが以下のようになります
A⇒B⇒C⇒D⇒A

 A社はB社に対し、架空売上を立てる、B社はC社に対して架空売上を立てて・・・最後はA社が支払いを行うということでぐるっと一周します。売上が当期で仕入れを翌期にすれば利益は永遠に出せるます。ただし、架空売上の金額は雪だるまのように増やさないと継続できません。

3.社外役員と会計不正防止

 さて、社外役員が直接こういった会計不正を発見できるかということですが、会社ぐるみで大々的にやっていて明らかに財務数値がゆがむほどの大きいものでない限りわからない
と思います。比較的細かく財務数値を見ている会計監査人でもわからないもの、社外役員がわかるはずがありません。したがって、不正の増加で社外役員の経営監視実効性が問われるといったような日経の記事ですが正直ピントが外れています。しかし社外役員の存在は会計不正の抑止力として全く無駄か?というとそんなことはないと思います

 財務諸表の虚偽記載のリスクを考えた場合、統制環境という考え方があります。例えば以下のような環境があればおそらく不正会計のリスクは高まるでしょう

 ・無理な売上・利益至上主義
 ・従業員への過大なプレッシャー
 ・ゆがんだインセンティブ

 社外役員は悪い意味での「会社の常識」にとらわれていない社会的常識がある方々なはずです。こういった方々がこういった統制環境にメスを入れることで間接的に不正会計の芽は摘むことができると私は思っています。。

 そうはいっても社外役員は会社の計算書類のもととなった生の会計数値見る時間もありません。そういった意味ではやはり会計監査人である監査法人の存在は大切です。監査法人は不正の抑止力になっているのでしょうか?

4.監査法人の悩みと希望

 会社ぐるみで不正を行っている場合、資料を要求しても「極秘である」「システム上用意するのが困難」「時間的に無理」など理由を付けて協力しないのが普通です。税務調査と違って一定の強制力がないですし、そしてもっと大きいことは統制環境上の問題

 ・無理な売上・利益至上主義
 ・従業員への過大なプレッシャー
 ・ゆがんだインセンティブ

は監査法人も一緒です。このような環境下、監査チームは決められた監査手続きをいかに効率的にこなすかがゴールです。

 会計不正についての日本公認会計士協会のコメントで「職業的懐疑心をもって相手の言うことをうのみせずにきちんと証拠を集めて実証せよ」とあります。まったく同感ですが、そんなことしたら決められた時間を大幅オーバー、そしてオーバーした時間分の報酬を顧客から徴収しなければなりません。せめてこれで不正等が発見できればまだ、顧客から回収の可能性ありますが、そうでなければほぼ回収不可能でしょう。

 そうすると、最近は減りましたが、部下のサービス残業でカバーするか、今は臭いものにはふた的な態度で気が付かなかったことにするしかありません。重箱の隅をつつくような検査をする金融庁の目もあり多少無駄だと思っても自分で他の業務を大幅削減して不審点を徹底的に追及する裁量は現場にはありません。たとえ、原則を守る真の士(さむらい)会計士がいたとしても現状の利益至上主義と形式主義に挟まれた中ではすぐに無能の烙印を押され大手監査法人では生き延びられないでしょう。

 監査法人のカバナンス強化といいますが、規制を強化することしか考えておらず(ローテーション制とか)本当の統制環境を変えようという方向性は見えて来ていません。金融庁支配下の監査法人の改革全く私は期待していません。

 しかし、希望はあります。監査法人を去らざるを得なかった、真の士(さむらい)会計士、企業組織に入りCFO(最高財務責任者)として活躍してほしいです。社外役員や監査法人とも協力関係を築き、社長の真の経営パートナーとして志の高い会社を育ててほしと思います。こういった会社が業績を上げマーケットで高い評価を得る、これが遠回りながら実は近い道なのかなと思っています。

 

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