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サブクリプションモデルの決算 -マネーフォワードの決算

2018.07.23 カテゴリ: 企業の業績分析企業経営での留意点

目次

マネーフォワードの決算発表

 先週になりますがクラウド会計ソフトのマネーフォワードの第二四半期決算が発表されました。これによると売上は前年比+66%の20億、営業損失とEBITDA(利払前、減価償却前税引前利益)はそれぞれ4.5億と5.1億と改善しましたが、まだそれぞれ2.2億、1.6億のそれぞれマイナスです。非常に面白いのは広告宣伝費をぬいたEBITDAを決算指標にしていることでこれは対前期で1.3億改善し1億の黒字となったと発表しています。これはサブクリプションモデルであるとこの会社が言っていることが一つの要因だと思います。サブクリプションモデルとはなんでしょうか?

サブクリプションモデルとは

 サブクリプションモデルとは定額利用モデルです。携帯有料アプリなどはその例で毎月定額で少額ながら課金されていきます。大抵は無料サービスを持っていますが、そのサービスに魅力を感じ、もっと使おうとすると有料課金されるパターンが多いです。アマゾンプライムなどはその例でよく利用する方などは送料無料やお急ぎ配達、読み放題などいろいろな付加サービスにつられて申し込まれている方は多いかと思います。

 このモデルのポイントは競合相手に比較し早く認識してもらい、まずは無料サービスを使ってもらうことです。さほどスイッチングコスト(他社サービスに乗り換えるための費用、手間)がかかるわけではないケースが多いですが、人間意外にこの手のサービスは漫然と利用し続けてしまう(という意味ではスイッチングコストは実は高い?)のでとにかく広告宣伝等様々な手段を使って顧客を囲い込むことが大切です。したがって、この手の会社にとっては広告宣伝費の性格は投資に近いといえます。

サブクリプションモデルとマネーフォワード

 このマネーフォワードもサブクリプションモデルで家計簿ソフトと小規模企業向けクラウドソフトが2本柱ですが、両方とも無料サービス持っていますが使いだすとやはり有料課金モデルを使ってみたい仕組みになっています。顧客を獲得してしまえば、ソフトウェアでサービス自体はほぼ完成しているので売上は定期的に入ってきますが維持コストはかかりません。一方子顧客獲得のためには無料サービスの提供や様々な広告宣伝費用がかかります。したがって、新規顧客に関してはコストのみがかかりますから、現状顧客に対する新規顧客の割合が高ければ必然的に赤字になります。こういった意味ではマネーフォワードの赤字はある意味健全な赤字という面はあります。

 ただ、ダメなサブクリプションモデルは新規顧客獲得に熱心になりすぎて、ついつい実は収益の元である既存顧客に対し雑なサービスをしてしまいがちです。このあたり既存顧客の流出につながり、注意が必要です。

決算を見て

 ただし、投資家も健全な赤字といって黙認してくれるくらい優しくはないでしょう。前年同期は売上約12億に対し販管費が14.8億とかなり大胆に費用を投下してきましたが、今期は売上約20億に対し15.3億と多少巡航速度に入ってきたという感じでしょうか。前年同期の広告宣伝費640百万に対し、今期は261百万とある程度抑えています。

 方向性としては特にクラウド会計ソフトの分野で付加価値の高いサービスを加え、一種のプレミアムサービスのラインナップを増やすステージに入ってきたように見えます。経営分析クラウドを提供するナレッジラボの買収などはこれにあたるのではないでしょうか?このあたりの方策がうまくいけば、黒字転換も見えてくるのではないかと思われます。

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