レナウン倒産の本当の原因
2020.06.08 カテゴリ: 企業の業績分析、企業経営での留意点。
目次
1.レナウン倒産に対する一般的な見方
2020年5月15日高級紳士・婦人衣料品の販売のアパレル企業である株式会社レナウン(3606)は民事再生手続きを申請しました。負債総額は138億円です。私の世代だとさすがにわかりませんが、よく懐かしのCM特集などでなどで「レナウン娘」などがでていたこととを思い出します。これにより、同社は事実上倒産、6月16日に上場廃止となります。新聞紙上などで「コロナによる上場企業倒産第一号」などと書かれましたが本当なのでしょうか?
いろいろな記事を見ると百貨店偏重とEC化遅れ(EC化比率3.2%ワールド13.4% 三陽商会12.7%)が挙げられていました。また、親会社である山東如意科技集団(以下「山東如意」)の傘下で行われたことがダラダラとしたリストラで縮小均衡に陥り、唯一の拡大策である中国進出も大失敗で撤退に至ってしまったことも言われています。
そしてとどめを刺したのは山東如意の子会社に53億円の貸倒が生じ回収不能になったことです。親会社に見放された形での倒産ともいわれ、コロナ感染拡大防止による自粛は最後の覚悟を決める一押しになったといった位置づけと一般的には見られているようです。
私は財務資料などを見ながら少し違った角度でこの倒産劇見ていきたいと思います
2.この倒産の不思議な点
この倒産劇でユニークなのは子会社による民事再生申し立てである点です。東京商工リサーチは以下のように伝えています
(「株)レナウンエージェンシー(TSR企業コード:291357725、以下エージェンシー)から、これまでに6億2,500万円の資金支援(貸付)を受けるなど、資金繰りがひっ迫していた。こうしたなか、5月15日支払期日の手形(合計)。8,700万円の決済資金を調達できず、決済不能となる恐れが出てきたことから、エージェンシーが債権者として民事再生を申し立てた」
。
これも、様々な記事等では親会社の山東如意が難色を示したためと伝えています。民事再生で他のスポンサーが現れて100%減資されてしまえば山東の保有する株式は紙くずになってしまいますので理解はできます。ただ、8700万円の手形会社の規模感から言っても何とかなる金額とは思われます。
何らか、もういい加減幕を引こうという意図があったような気がしてなりません。これは何なのでしょうか?レナウンの財務諸表見てみます
3.レナウンの財務諸表をみる
レナウンの経営成績は、バブル崩壊後の91年12月期に営業赤字に転落したのちはほぼ一転して赤字決算主体で30年間続いていました。1981年は2000億を超える売り上げがありました。近年を見ると売上は5年連続右肩下がり、2016年2月期 712億 2019年12月期 502億(変則10か月 年換算602億)です。加えて、2年連続の当期損失を計上でそれぞれ39億、67億でした。営業キャッシュフローは2018年、2019年2月期を除きマイナス、この2018年2月期、2019年2月期は投資キャッシュフローのマイナスが大きいため、フリ―キャッシュフロ―はマイナスこのよう状況でも財務キャッシュフロ-は2018年2月期に34億増えている(短期借入金)以外はずっとマイナスでした。これは短期でしか借りることができない状況、ほぼ金融機関からは見放されていたといえるでしょう
この中で非常に不思議なのは2018年2月期、2019年2月期の投資キャッシュフローです。投資キャッシュフローがマイナスとと言うことは何かに投資したということです。細かく適時開示資料などを見ていくと、2018年2月期は、2017年12月に約56億円でアクアスキュータムの日本国内商標権を購入しています。ちなみにアクアスキュータムは親会社の山東如意のグループ会社の子会社からの購入といういわばグループ会社内取引です。
2019年2月期も23億の無形固定資産の取得が計上されていますが、ブランド等の購入であればむしろ発表されるはずですが、このような高額の「無形固定資産」の購入なのに何の適時開示・プレスリリースもありません。これは何を意味しているのでしょうか?
4.レナウン倒産の大きな理由
最後に倒産の引き金を引いたのは前述したように山東如意の子会社に53億の不良債権でした。今まで起こったことを簡単まとめると、近年、レナウンの資金は山東如意に流出していたのではないでしょうか?ここ5年程度財務数値を見ているとレナウンではまともな投資はほとんどされず、不可解な「無形固定資産投資」だけです。
親会社である山東如意は無理な買収がたたってかなり資金繰りが苦しいという話をよく聞きます。あくまで推測ですが、親会社である山東如意が経営を壟断してガバナンスが働いていない状況が続いていたのではないでしょうか?2020年の3月の定時株主総会でも山東如意が当時の神保佳幸社長と北畑稔会長の取締役再任の議案に反対し取締役会長に山東如意科技集団の邱亜夫董事長が就任するというゴタゴタも起こっていました
こういった経営の壟断に対し最後はレナウンが名門の意地を見せて、民事再生という自分の身を切っても山東如意を追放したといった結末だったのではないかという気がしてなりません。
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