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セブン&アイの中期経営計画の大きな変化とスピードウェイ買収の効果

2021.07.21 カテゴリ: M&Aグローバルビジネス企業経営での留意点

目次

1.大きく変わったセブン&アイの中期事業計画

  突然のFTC(米連邦取引委員会)の待ったにより遅れていたセブン&アイのSpeedway買収も終わり、中期経営計画が7月に発表されました。目を通したところかなり方向性が代わってきたというのが実感でした。印象が特に強かったのは、2030年の将来像として世界トップクラスのグローバル流通グループとはっきりと掲げたことです。海外コンビニ事業が中期経営計画の事業の説明としてはトップを飾り、ページ数も13ページと事業の説明では一番多くのページを割いています。

 後、恥ずかしながら認識しておらず結構びっくりなのですが、現在は実はセブン&アイは世界16か国にしか進出していません。逆に言えば今回大きくグローバル化に向けて舵をきりましたが、グローバルな成長機会ののりしろは大きいかもしれないわけです。営業キャッシュフローから資源配分もこれから3年間に29%を海外CVS事業に振り向けると宣言しており、これは国内CVSの20%を大きく上回ります。

 その中でも、大きな部分を占めるのが北米事業であり、今回のSpeedway買収は大きな戦略的な意味を持つといえます。この動向を見ていきます

2.Speedway買収は高値買いか?

 この買収は、米マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「Speedway」を買収したものです。FTCから反トラスト法による異例の待ったが買収直前にかかり一部売却することになり、当初約3900店舗の買収でしたが、3928店舗でそのうち291店舗は売却するということで落ち着きました。今回の買収完了で契約締結の2020年8月時と違ったことがいくつかありました。それをみていきます

 契約時では買収額21000百万ドル(約2.2兆円)、この時のEBITDAが約$15億ドルであったのでEVITDA倍率(買収価額÷EBITDA)は13.7倍割高といわれました。別にきちんとした物差しはないのですが、この倍率が10倍を超えると高い(おそらく日本電産の永野会長が述べたことが契機か?)と言われています。

 これに対しセブン&アイ側はプロフォーマ取得価額という概念で割高ではないとメッセージをあげていました。まずセールアンドリースバック(SLB)と資産売却、(SLBもいったん売却したものを買い手からリースする方法なので広い意味では資産売却)です。確かにキャッシュフロ―的には取得価額のマイナスといえるでしょう。

 もう一つ挙げている節税効果については今後15年間の節税効果なので、詳細がわからないので何とも言えませんが、確実でない長期にわたる効果をここから控除するのが本当に妥当なのかはよく判断がつきません。

 そして、分母のEBITDAについてもシナジー効果を見込んでいるので現状よりもかなり数字は改善すると推測し、そうすると昨年の8月時点では実質的なEBITDA7.1倍、いい買い物ですよね・・・というストーリー展開でした。

 今回の発表時点では実質的なEBITADA7.9倍と少し高くなりました。これはSLBを多額に行わなくても十分キャッシュポジション的にも経営成績的にも問題がないと判断したため、SLB額をへらしているからです。そして昨年8月時点よりもEBITDAが改善しており、かつシナジー効果も多く見込まれそういった要素も入れれば6.4倍程度と実質的には相当改善していると発表しています。

 この確実性はどうなのでしょうか?

3.Speedway買収は本当に効果がありか

 短・中期的にある程度の成功は見込めると私は思います。米マラソン・ペトロリアムが経営、要するに「ガソリン屋」がコンビニ併設しているわけです。売上の76.5%がガソリンで、商品は23.5%に過ぎませんでした。しかし、粗利は商品が51.1%とガソリンより高い状況で商品を伸ばせば業績はどんどん改善します。

 あくまでも個人的な経験に基づく感覚ですだが、アメリカのこういったコンビニ、田舎で他に店もなく、仕方なくそこで、まずいけどおなかもすいた、または疲れたので少しリフレッシュと軽食やお菓子を買うイメージです。何となく埃っぽくすすけた感じです。要するにまずそうなものが売っている印象です。

 ガソリン屋とセブン&アイの商品力はさすがに全然レベルが違うのでシナジ―効果で店舗の業績はあがると考えらます。また、統合部隊をセブン&アイが派遣してがっちりPMI(買収後統合)をやる旨宣言しているので確実性は高いでしょう。

 中期経営計画をみてもガソリンの話はなく、とにかく食品とデリバリーは2つの柱であり、調理パンや軽食などを強化していくとしています。わらべや日洋(米国法人であるわらべやテキサス)という企業があり、ここはセブンイレブンのお弁当やおにぎり、調理パンなどを製造していますが、今年バージニア州に工場を建設して東海岸にも進出します。このあたりもセブン&アイの戦略と平仄を取っているといえ、しっかりとセブン&アイ足元を固めています。しっかりと地についた計画といえ成功確率は高いと思います。

 しかし、これで万々歳でしょうか?一方米国のライバルWalmartはDXに毎年約1兆円投資、海外もインドのE-Commerce買収などデジタル投資に集中しています。長期的にこのような投資の方向性の違いがどう将来の両社の成長につながっていくのでしょうか?このあたり私レベルでは答えは出せません。しかし興味深いです。

 

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