そごう西武の売却の理由
2022.07.07 カテゴリ: 企業の業績分析、企業経営での留意点。
目次
1.そごう西武の売却決定
そごう西武の売却をめぐって売却相手がフォートレスに決定したと新聞等で発表がありました。フォートレスは、「ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドで、賃貸住宅大手レオパレス21やゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフへの投資実績がある」(読売新聞)投資ファンドでうそうで日本経済新聞によれば提示額は2000億を超えました。
そごう西武単独の財務諸表、セブン&アイグループホールディングスの決算短信で公表されていますがコロナ前からしばらくずっと赤字、純資産も640億円程度、そして借入金も3000億程度あります。どうして提示額が2000億を超えるのでしょうか?
ポイントは不動産でしょう。西武池袋や大宮・千葉のそごうの不動産等の含み益はかなりありそうですし、その有効利用でゲームチェンジはできるかもしれません。フォートレスは不動産の有効利用が得意そうです。投資先もレオパレス21やアコーディア(ゴルフ場)で両方とも広い意味で不動産関連
です。そして実は百貨店も今や不動産会社または金融会社となっているのです
2.金融系 丸井
金融系の代表はそもそも純粋な百貨店ではないかもしれないですが丸井です。実は売上2022年3月の約2000億のうち、小売りは700億で金融(フィンテック)が1300億営業利益の約360億のうちほとんどは金融部門からたたきだしています。コロナ前の2019年決算でも2500億の売上のうち半分は金融、そして営業利益約400億のうち300億以上は金融です
そして「売らない百貨店」を標榜して、体験型店舗を目指してます。非物販が売り場面積の50%を超えました。実店舗はそこで完結する最終商品を販売するゴールではなく、丸井のビジネスの入口商品を売る場所でしかないわけです。
極端な話、エポスカード等の申込窓口になってくれればいいという割り切りがあります。そして、丸井の金融業への拡大と家計に占める丸井の金融事業の割合を広げていく窓口は実店舗で要するに実店舗は入口商品を売る場所なのです。
一方不動産会社になっていく方向もあります
3.不動産系 三越伊勢丹
三越伊勢丹の場合、2022年3月期決算黒字化しました。約4000億の売上げのうち3700億は百貨店事業ですがこの事業は約60億の赤字、これを金融・不動産の黒字110億円で埋め合わせて50億の黒字という決算です。
コロナ前の2019年3月の決算では約1兆円の売上のほとんどは百貨店事業ですが営業利益は150億円ほど、実は半分近い140億円は金融不動産で叩き出していました。経営計画を見ても百貨店の再生は唄ってはいますが、自社の持つ不動産の有効活用によるまちづくりも柱として掲げています。
全般的な流れは既存の不動産に少なくも新しい百貨店を創るのではなく、良いテナントをいれてバリューアップを図るディベロッパー的な側面を強く感じます。実は現状の日本の百貨店ビジネスも本当に小売業かというのは疑問です。以前お聞きしたのですが社員のうち店頭に立つのはせいぜい1割で基本的には売り場管理がお仕事のようです。
ほかの私の知った業種では(暴力団新法前の)昔のテキ屋さんの親分が似ています。お祭りの場所割を仕切って場を盛り上げます。そしてトラブルが起きた時はさっと子分たちが解決します。そしてバイをやっている寅さんみたいな方から所場代を取るといった感じです。現在の百貨店、トラブル解決がす巻きにするとか荒っぽいことをやらない以外は似たところあります。実際にはもう今の百貨店小売業ではないのです。
4. そごう西武の迷走
そういった意味でそごう西武は不動産でも金融でもない過去の延長線をなんとなく進んでいただけに見えます。ダラダラとリストラを続け、単なる縮小均衡スパイラルに財務数値を見る限りみえます。店舗閉鎖・縮小など固定費削減⇒売上減少⇒固定費削減⇒売上減少です。不動産でも金融でも何か新しい第三の道どこにもいけなかったそごう西武は売却されることになったといえるでしょう。
個人的には長らく私は西武池袋線の住民でしたので特に池袋西武デパートには愛着があります。特に30年前くらい前までは西武池袋デパートにはワクワク感がありました。いま、そういったデパートはないですよね。
思い浮かぶのは米国のノードストロムです。ノードストロムは、2022年1月期決算でも492億ドル(約640億円)の営業利益をあげています。富裕層を意識したつくりで、マンハッタンのアッパーイーストの新店舗は売り場の真ん中にバーがあって、店内飲食可、店内の滞在を長くする工夫がこらされています。今度マンハッタンにた立ち寄った際はぜひのぞいて見たいお店です
逆に日本のデパ地下、個人的には好きですが、お惣菜なんか買ったら普通それから買い物せずに、帰ってしまう気がします。。バーを置くのとは対照的に店内滞在の長さに逆効果ではと思うのは私だけでしょうか?(日本ではバーは文化的に?ではありますが)
ただ、西武池袋店の場合、土地柄高級路線とはいきづらく、どういった路線を取ればよかったのかよくわからないというのが実感ではあります。でも個人的にはいくら採算が良いと言ってもビックロ(三越新宿店は閉鎖してビックカメラとユニクロの店舗になった)みたいにはなってほしくはないです。